『労働局の夢』

今朝は、自分が部落出身ということが発覚してバイト先の塾を首になり、労働局に駆け込む夢を見た。労働局? 初めて聞く名だが、ググってみたら実在した。自意識からは決して働き掛けられない場所に保存されている記憶ってのが人間には確かにある。が、記憶でさえ意のままにならないのだとしたら、どこに我々は自由を見出せばいいのだろう?

まぁとにかく私は『労働局』を求めて都電のどっかの駅で降り、駅前の青空駐輪の波をかきわけながら『労働局』を探した。私はビールを飲みながら町をさ迷い、道行く人は私に向かって石つぶてを投げた。イスラムの世界で最も重い刑とされているのが石打の刑だ。石はぶつけられてみた感触としてはお新香みたいな感じでへにゃへにゃしていたが、たまらなくみじめだった。

結局『労働局』は見つからなかった。町の大気はぬるぬるしていて、私はクロールをするように小走りで町を巡ったが、『労働局』なんてどこにもなかった。それでいいのだと思う。人生には最終的な駆け込み寺は存在しないのだから、甘やかさない方がいい。

文章:ビール