『ナプキン』

Kは恐る恐るそのプラスチック・ケースに手を伸ばした。凄まじいものを見つけてしまった。

(ナプキンか…)

凄絶な光景だった。トイレに置き忘れられた謎のプラスチック・ケース。直感的に生理用品に間違いないとは察していたが、フタを開けてみて、その形状と材質、パッケージの文字と置かれていた状況などを総合して、やはり「これはナプキンである」という結論に達した。

(間違いない、これは、『ナプキン』だ…)

男にとって生理用品とは、ある種禍禍しい、禁忌のオーラをまとっているものである。この禍々しさ、こればっかりはいくら女性器を見なれても、舐め回しても、しゃぶり尽くしても、決して晴れはしない。それは性の禁忌を多分に背負った現代人の原罪意識とさえ言えるだろう。

(恐ろしい発見だ…)

Kは戦慄した。結論は如何ともし難かった。現実を受け入れるということは、時としてこれほどまでに残酷なのことなのか。不規則に脈打つ心臓の鼓動と体中から発せられる冷たい汗を感じながら、Kはとうとう結論を受け入れた。

(母さん、まだあがってなかったんだ…)

プラスチック・ケースを握り締めるKの手の甲に、一滴の涙がこぼれ落ちた。

文章:ビール